次亜塩素酸水 弱酸性と微酸性は何が違うのか


新型コロナウイルスの影響によりアルコールに代わる消毒液として大きな注目を浴びた次亜塩素酸水ですが、次亜塩素酸水を購入しようとしたときに商品によって弱酸性とか微酸性と書いてあって、どう違うんだろうと思ったことはないでしょうか。

今回は意外と知らない次亜塩素酸水の種類についてお伝えしたいと思います。

次亜塩素酸水の定義と種類

次亜塩素酸水とはもともとは食品添加物に指定される際についた名称です。そのため、食品添加物としての次亜塩素酸水には明確な定義があります。

本品は,塩酸又は塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる,次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。本品には,

・ 強酸性次亜塩素酸水(0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽(隔膜で隔てられた陽極及び陰極により構成されたものをいう。)内で電解して,陽極側から得られる水溶液をいう。)

・ 弱酸性次亜塩素酸水(適切な濃度の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽(隔膜で 隔てられた陽極及び陰極により構成されたものをいう。)内で電解して、陽極側から得られる水溶液、または、陽極から得られる水溶液に陰極から得られる水溶液を加えてものをいう。)

・ 微酸性次亜塩素酸水(塩酸及び必要に応じ塩化ナトリウム水溶液を加え適切な濃度に調整した水溶液を無隔膜電解槽(隔膜で隔てられていない陽極及び陰極で構成されたものをいう。)内で電解して得られる水溶液をいう。)がある。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf

長い文章でやや読みにくいですが、重要なのは1番上の文、次亜塩素酸水は、塩酸又は塩化ナトリウム水溶液を電解して得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液であること、そして強・弱・微の3種類の酸性次亜塩素酸水があるということです

しかし、実は世に出回っている商品は電解して生成した次亜塩素酸水のみならず、二液混合と言われる、例えば次亜塩素酸ナトリウムや希塩酸を飲料水で希釈するなどして生成するという方法で作られた次亜塩素酸水もあるのです。

これについては後程触れるとして、まずは次亜塩素酸水の3つの種類について詳細を見ていきましょう。

次亜塩素酸水の種類

次亜塩素酸水は次の3つの種類に分かれますが、それぞれpH値や濃度が定義されています。

強酸性次亜塩素酸水 pH2.7 以下 20~60ppm

弱酸性次亜塩素酸水 pH2.7~5.0 10~60ppm

微酸性次亜塩素酸水 pH5.0~6.5 10~80ppm

厚生労働省が食品添加物としての次亜塩素酸水についてその有効性などを記した報告書を出しているので、今回はその報告書から違いを見ていきましょう。

有効性

・微酸性次亜塩素酸水

微酸性次亜塩素酸水の殺菌効果については以下のように記載があります。

培養した大腸菌、黄色ブドウ球菌、MRSA、サルモネラ菌、緑膿菌、レンサ球菌、枯草菌、カンジダ、黒コウジカビの各種微生物を、微酸性次亜塩素酸水(pH5.2、有効塩素濃度 57mg/kg)に添加し、経時的に生菌数を測定し、殺菌効果を検討したところ、枯草菌以外の微生物に関しては、1分でほとんどが死滅した。枯草菌については、接触 3 分後にほとんどが死滅した。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf

・弱酸性次亜塩素酸水

弱酸性次亜塩素酸水の微生物に対する殺菌効果については以下のように記載があります。

弱酸性次亜塩素酸水(pH 3,有効塩素濃度 30 mg/kg)10mlに菌(緑膿菌、サ ルモネラ、腸炎ビブリオ、エンテロバクター、フラボバクテリウム、セレウス、サーキュランス、メガリウム)液 1 ml を接種した。菌液は 1 ml 当たりの菌数が約 10 CFU となるように調整し、その後、常温で作用させ、30 秒、1、2、5 分後に 0.1 mlを増菌用培地に接種培養(37℃、7 日間)した。緑膿菌、サルモネラ、腸炎ビブリオ、エンテロバクター、フラボバクテリウムについては、 作用後 30 秒で陰性であった。しかし、芽胞を形成しているセレウス、サーキ ュランス、メガリウムは、作用 5 分後でも陽性であった。さらに、電解水の水温を高めることで殺菌効果があがることが確認された。(注釈番号は省略)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf

以上のようにそれぞれで実験している菌はことなりますが、どちらも多くの菌を殺菌できることがわかります。微酸性次亜塩素酸水の殺菌効果については次亜塩素酸ナトリウム等(ハイターをイメージしてください)と同等以上の効果が得られています。

食品中での安全性

更にその安全性についても注目したいと思います。

・微酸性次亜塩素酸水の食品中での安全性

微酸性次亜塩素酸水(pH6.5、有効塩素濃度 70.2mg/kg)でホウレンソウを 10 分間浸漬処理し、処理後、第 2 版 食品中の食品添加物分析法 2000「次亜塩素酸 塩類」に準じ、試料中の有効塩素濃度の測定を行った結果、試料中に有効塩素は 検出されなかった。従って、食品中への残留性は低い事が示された。また、同時に、処理後のクロロホルムの生成についても調査したが、次亜塩素酸ナトリウム (207mg/kg)での処理と比較すると、クロロホルムの生成量は低い値を示した。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf

・弱酸性次亜塩素酸水の食品中での安全性

弱酸性次亜塩素酸水は、食品に注入・混和するものではなく、食品の殺菌洗浄として使用し、飲用適の水ですすぐため、食品に残留することない。 強酸性次亜塩素酸水の試験では、有効塩素濃度 27~28 mg/kg、pH 2.5~2.6 の 強酸性次亜塩素酸水で、キュウリ、キャベツ、牛肉、鶏肉を洗浄し、食品に残留した残留塩素濃度を測定したところ検出限界(0.5 mg/kg)以下であった。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf

今回は食品添加物としての有用性の報告書を参照しているため、食品添加物としての使用方法の安全性の確認にとどまりますが、いずれにしても残留性が低く安全性が高いことが伺えます。
その中でも特に微酸性次亜塩素酸水については浸漬処理をしても有効塩素は検出されず、残留性の低さが伺えます。通常の使用方法を考えても食品に注入もしくは混和するようなことはないと思いますので、手指に使用したり家の中を拭いたりしても殺菌効果は高いのに残留性は低いということが想定されますね。

ただし、次亜塩素酸水の販売サイトの中では次亜塩素酸水は食品添加物として使用されているから安心というような文言が見受けられますが、食べても安心ということではありません。あくまで食品加工の際の殺菌料として使用されており、最終食品の完成前に除去される場合、安全性に懸念がないと考えられていますので注意してください。

どの種類の次亜塩素酸水を使用するべきか

強酸性次亜塩素酸水はあまり一般には流通していないかもしれません。主に医療現場や業務用として使われることが多いようです。
一般消費者向けに市販されている商品は大体が微酸性か弱酸性と書かれていると思います。微酸性の方がpH値や塩素濃度が安定しやすいという意見もありますし、上述の通り残留の心配もないので微酸性次亜塩素酸水を選ぶことをお勧めします。
Webサイトを見てみると弱酸性と微酸性が混同して書かかれている商品も見受けられますので注意が必要かもしれません。

また、上述した通り、次亜塩素酸水には生成方法が電気分解と二液混合があります。二液混合の場合明確にpH値や塩素濃度を記載する決まりなどがないため、商品やHPに書いていないケースも見受けられます。
次亜塩素酸水には確立された定義がないため次亜塩素酸水として販売されている製品の中身は多様であることを理解していただきたいと思います。先にお伝えした定義はあくまでも食品添加物としての定義であって、食品添加物としてではない目的で販売されているものには定義はないのです。
今後明確な定義ができると良いのですが、まずはご自身で成分や原料などを把握していただき、用途に合わせて使用方法や必要な容量などをよく読んでしっかり判断して使う商品を決めていただきたいと思います。

新型コロナウイルス対策について

2020年6月26日nite(独行政法人製品評価技術基盤機構)から次亜塩素酸水の新型コロナウイルスへの有効性が認められたことが発表されました。その内容は以下の通りです。

・次亜塩素酸水(電解型/非電解型)は有効塩素濃度35ppm以上

・ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは有効塩素濃度100ppm以上

なお、今回の検証結果を踏まえると、次亜塩素酸水の利用に当たっては以下の注意が必要であることが確認されました。

・汚れ(有機物:手垢、油脂等)をあらかじめ除去すること
・対象物に対して十分な量を使用すること

https://www.nite.go.jp/information/osirase20200626.html

この発表はあくまで新型コロナウイルスを用いた検証結果ですので、他のウイルスや菌への除菌・殺菌効果についてはこの限りではありませんので注意してください。今回の検証では電解型も非電解型も有効塩素濃度が同じであれば効果も同じはずと判断されています。

また、次亜塩素酸水はウイルスや菌と結びつくと水になってしまうことが言われているため、そもそも手や拭きたい場所が汚れているとあまり効果が発揮されないように思います。そういった意味ではアルコール消毒は手洗いの代わりとして使用することができますが、次亜塩素酸水は水道水でしっかり手を洗った後に使用するという方法が良いかもしれません。次亜塩素酸水は赤ちゃん用品にも使えるなどメリットも多い水溶液ですが、こういった点がデメリットと言えるかもしれません。

今はコロナへの脅威が大きいですが、次亜塩素酸水はインフルエンザやその他の菌・ウイルスにも効果があります。今除菌生活が身についていると思いますので、使い方をよく理解した上で様々な病気をしっかり予防して健康な生活を送りたいですね。